ふたりぼっち兄弟―Restart―【BL寄り】

2.かぞくと愛-兄-



【2】



 警察署 留置場 面会室。


「暇だ。益田の奴、どんだけ俺達を待たされるんだよ」
「こうなったのはあんたのせいでしょう」

 俺と福島は面会室で待ちぼうけを食らっていた。
 かれこれ一時間半、ぼけぇっと狭い個室の風景を眺めている。
 面会室はドラマで見るような風景で、床も天井も壁も真っ白。分厚い特殊ガラスが一枚、部屋の空間をぶった切って存在している。

 へえ、ガラスの向こうには事務机があるじゃん。あそこに見張りが座って会話を記録するのか?

 どうでもいいことを考えながら、俺はあくびを噛み締めた。
 親父に会いたいっつっただけで、こんなに待たされるなんて聞いてねえ。

「素直に受付した方が良かったんじゃないの? 下川」
「受付したところで15分程度の面会時間だ。情報の『じ』も手に入られねえだろう? だから伝手を頼ってみたんだが、こりゃ予想外だったな」

 警察署に到着早々、俺は柴木を通して益田に親父の面会を求めた。
 表向き『被害者』と『加害者』だから、ひとこと警部の益田を通せば、受付するよりも長く面会時間を得られると思ったんだが……判断をミスったか?
 それとも余計な伝言を混ぜ込んだせいか? 面会の伝言といっしょに、面会を通して親父から一連の事件の情報を引きずり出したい、とか言ったもんだから。

 とはいえ、あそこまで言わないと益田は腰を上げることはねえだろう。ああ見えて、公正な男だ。ただ面会を求めるだけじゃ、面会時間の延長なんざ許可しねえ。
 一連の事件の情報をダシに使えば、益田も動かざるを得なくなる。
 警察だって一連の事件の情報を得たいはずだからな。

「福島。先に断っておくが、今回の面会でおおよそチェリー・チェリー・ボーイの情報は警察にも伝わる。ある程度、警察に情報が知れ渡るのは覚悟しとけよ」

 隣であくびを噛み締めながら、電源を落とした携帯を触る福島に話し掛ける。
 気だるそうに俺を見やってくる福島は、間延びした声で返事した。

「言ったでしょ。少しは博打も必要よ。面会で情報を求めようとしている時点で、それなりに覚悟しているわ」
「さらに言えば、益田が俺たちに事情聴取を持ち掛けてくる可能性もある」
「でしょうね」
「それでもいいってか」
「あんたも同じでしょ」
「手前の足だけで情報収集をしてぇ気持ちはあるが、こう見えて俺はただの大学生。事件を追うことにはど素人だ。少しはプロに情報を渡して、引っ掻きまわしてもらわねえと」

「へえ知らなかった。あんた、ただの大学生だったのね」
「そういうテメェはただの女子大生ってか?」

「一応、ね」
「一応ねえ」

「ねえ、お兄ちゃん」
「誰がお兄ちゃんだ。気色悪い」
「なによ。かわいい妹が話しかけているのに」
「俺にはかわいい弟しかいねえ。帰れ」
「那智くんはあたしの弟でもあるんだけど?」
「喧嘩か? 買うぞ」

「提案するわ。一日でいいから、那智くんとあたしの妹を交換しない?」
「あ?」
「今なら姉もつけるわ」
「いらねえ」
「半日でもいいから」
「いらねえ」
「あたしもいらないのよねえ。姉と妹」
「俺は那智を手放すつもりはねえ。交渉にならねえよ」

「仕方がないじゃない。暇なのよ」
「そりゃ分かる。暇だ」

 嫌味には嫌味を。
 悪態には悪態を。
 クダラナイ話にはクダラナイ話をして暇をつぶしていると、ようやっと特殊ガラスの向こうに見える重たい扉が開いた。

 中に入って来たのは青白い顔を作った親父と、ガタイの良い看守。そして刑事の勝呂。
 同時に俺達側の扉も開いて、警部の益田と刑事の柴木、こわもての警察官が入ってくる。

 益田に連絡を入れた時点で覚悟はしていたが、やっぱり観衆つきの面会になりそうだな。こりゃ。
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