水面に浮かぶ月
欠伸をしながら煙草を消したリョウに、透子は、前のめりに聞いた。



「どうしたの? リョウ。気分でも悪い?」

「わかんねぇけど、すげぇ眠ぃ」


リョウは眉間を揉む。

透子は鼓動が速くなった。



「疲れてるんじゃない?」

「んー……」

「先にベッドに行きなよ。私もこれ片付けたら行くから」

「……ん」


したのかしていないのかの返事の後、リョウはふらふらと席を立って寝室に向かった。

そして、電気もつけずにベッドに倒れ込むようにダイブした。


恐る恐る近付いてみると、リョウはすでに寝息を立てていた。



「リョウ? ……ほんとに寝たの?」


どんなに揺すっても、リョウは微動だにしない。


透子は唾を飲み込み、リビングへときびすを返す。

当初の目的を果たすために。




テーブルの上に置いてあったリョウの携帯を手に取り、持参したSDカードをセットして、データのすべてをそれに保存した。

それから、床に直で置かれているノートパソコンを起動させ、そのデータもすべて、持参したUSBメモリに保存した。


作業を終えると、証拠を消すために、睡眠薬の入ったグラスを念入りに洗った。


ごめんね、リョウ。

心の中で何度もそう言いながら。

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