水面に浮かぶ月


透子から受け取ったデータの中身は、光希の予想以上にいい情報だらけだった。

特に携帯に入っていた、リョウの顧客の電話番号は、それだけでもかなりの価値になるだろう。


今日は早めに『cavalier』を閉めさせ、ひとり、カウンターで色々な算段をしていたら、



「光希」


びくりとした。


振り返ると、リョウがいたから。

入り口のドアを閉め忘れていたことが災いしたのだろうが、計画を悟られるわけにはいかない。



「どうしたの? 久しぶりじゃない?」


光希は笑顔を作った。

リョウは物憂い顔で光希の横に座る。



「何か飲む?」

「はぁ? 何、気遣ってんだよ。いつもは帰れって言うくせに、らしくねぇじゃん。気味が悪ぃな」

「失礼なことを」


言いながらも、内心、気が気ではなかった。

だが、リョウはそんな光希の様子に気付いたような気配はなく、



「なぁ、俺、どうしたらいいと思う?」

「え?」

「わかんねぇんだよ、俺。こんなん初めてだよ」


リョウは泣きそうな顔だった。

光希はひどく戸惑って、



「……リョウ?」


恐る恐る、声を掛けた。

少しの後、顔を上げたリョウは、
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