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 直感で分かった。この人が切れ者部長だ。この緩部署へ就いてくれた。



『ご挨拶が遅れました。営業2課で総務を担当しております』
「私は今日付けで部長になった佐原 葵(サラハ アオイ)だ」
『宜しくお願いします』



 部下にも丁寧に頭を下げるとダメ営業マンを連れてミーティングルームへ入った。



 佐原 葵と言ったら我が社では有名だ。飴と鞭を使い分け部下達を奮起させる。低迷している部署を持ち直すプロとも言われている。



 しかし見込みの無い者は容赦なく切る。それなのに出世欲は無い。



 此処は大きく変わる…。絶対に…。



「皆集まってくれ」



 常務の声に皆が集まる。女性社員は黄色い声を上げている。



 改めて佐原部長を見ると騒ぐ理由が納得だ。期待を裏切らない容姿をしている。



 年相応の色気とセンスの良さ。中年独特の面倒くささを感じない。



「本日付で営業部部長になった佐原葵君だ」
「佐原です。この緩みきった空気を一掃しますので覚悟して下さい」



 冷たい声に一同の口が閉じる。これ位厳しくないと絶対に変わらない。それについて来れないのなら辞めれば言い。



 社会はそんな甘い学校みたいな所ではないのだから。



「じゃぁ、皆戻って仕事を始めて」



 常務の声が部屋中に響いた。今まで見た事のが無い速さで全員が席へもだおる。



 騒いでいた女性社員もすっかり静かになった。


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