ビロードの口づけ 獣の森編


「でもジンのアピールは即決で受けるって言ってなかった?」

「だって、ジン様は最高の男ですし。別格ですよ。それくらいの男でなければ仕事の方を優先します」


 ミユの男選びは、結構条件が厳しそうだ。

 ミユのように働く女は少ないと聞いた。
 子どもを産める女は男の後ろ盾が得られるが、産めない女や乳離れしたばかりの子ども、働けない年寄りはどうしているのだろう。

 クルミの疑問に、ミユは首を傾げた。


「子どもは、ある意味大人みんなで育てているようなものです。でも他は、どうしているのか、私にはわかりません」


 知識も生活の糧も、男女を問わず大人が子どもに与えるらしい。
 ただし、子どもが”欲しい”と意思表示すれば。

 稀に消極的な子どもにも与える、気のいい大人もいるが、稀である。

 年寄りはいつの間にかいなくなっているらしい。
 弱肉強食の世界では、弱いものは淘汰される運命なのだろう。

< 36 / 115 >

この作品をシェア

pagetop