Sweet memory.




「やっと目覚めましたか」

黒いスーツを身に付けた長身の
男性は私ににこやかな笑顔を向けた。

「誰‥ですか」

「申し遅れました。私は櫻庭家に仕える執事の瀬川、と申します」

櫻庭家‥?
執事‥?
聞いたことのない単語に混乱して
思わずまじまじと瀬川さんの顔を見つめる。

しかし瀬川さんは表情を少しとも崩さず
柔らかな笑みを浮かべて言った。

「貴女様は今日から櫻庭菜花として新しい人生を歩んでいくのです」

「さくらばなのは‥?それが私の名前?」

「はい。菜花様の身の回りのことは全て私にお任せください」

「え?」

さっきから様付けで呼ばれたり
執事?なんて聞いたことの単語が出てきたり‥

「菜花様は櫻庭財閥のお嬢様でございます。これからは全て私、瀬川が菜花お嬢様のお世話をさせていただきます」

瀬川さんは淡々とした口調で言い、またにこりと微笑んだ。

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