† of Human~人の怪異
そう――誇らしいのだ。

歪み、狂っていく自己を感得できるのが、誇らしいのだ。

自らは今、人間の小さく堅い境界線を、越えようとしているのではないだろうか。

超越者となりうる感覚が、腹の奥底で獣のように歓喜を噛み締めている。

あと何分だろうか。

この歪んだ感情と濁流する愉快さに、人間として身を委ねられるのは。

あと何秒だろうか。

自分が人間としてこの世に認知されていられる、矮小に凝り固められた時間は。



喉の奥に、焼けた砂がこびりついているかのように、息ができない。

しかしそれすら、己が超越者となる前兆と思えば、苦しくはない。

少年はただただひたすら、小刻みに貧乏ゆすりを続ける。
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