† of Ｈuman～人の怪異

人間全体を見下しての言葉を、

「なんだあお前、人様ン壁ぶち壊してその態度は！」

目の前の男は、自分を卑下されたと勘違いした。

そんな勘違いも、男の直情的な怒りも、

「はあ……」

溜め息の種にしか、ならない。

そんな不毛の種は、

「お前、そのふざけた態度はなん

排除してしまおうと思った一瞬で、路地から消え失せていた。

否、巨大に膨れ上がった桜庭の右腕、大蛇の顎に、飲まれていた。

ぐちゃりぐちゃりと小さな音をたてて、大蛇がなにかを嚥下する。

大蛇の胴に、五つの出っ張りが見て取れる、なにかを。

「やれやれ」

路地を埋め尽くすほどの大きさが、まるで幻だったかのように、顕現したのと同じく一瞬で、大蛇が収縮し、桜庭の右腕は人間のそれになる。

飲み込んだはずのなにかは、すでに輪郭すら圧縮され、彼の体内に吸収されていた。

驚異的で、まさしく人知を超越した、贅沢な食事である。