† of Human~人の怪異
「僕、君が嫌いだよ!」

あまりこたえた様子のない桜庭が猛り、残る一匹の大顎で上野を捉えんとする。

が、上野は先ほどから頭ひとつ潰すのに簡単な労力しか要していない。

その体術も、剣術も、クラスのおとなしいイメージとは異なり、無駄がない。

蛇の頭は、下から振り上げられた剣に、斬り飛ばされた。

分断された頭が、和幸に近い場所に落ち、腐れ落ちる。血溜まり。

「好き嫌いの問題じゃありません!」

と、剣を振り上げた勢いそのまま、上野は大きく跳び上がった。

体育の授業で、そこまでの運動神経を見せただろうか?

いやたしか、体力測定の幅跳びで彼女は、尻餅をついていたはずである。

あんな跳躍は、ありえない。

しかし、だからむしろ笑える。

彼女の跳躍は、十メートルにも軽く及んでいたのだから。
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