野良猫 lovesong 1
スヤスヤと小さな寝息をたてながら
眠るこいつをどうするにも
出来ず、俺はただ見つめていた。

『はぁ……。』

煙草を吸おうにも
水に浸かってダメになったし
携帯も使い物にならなくなった。

なにより、肩を枕代わりにされてるから
下手に動けねぇし…………。

ま、軽いんだけどな?

なんて思ってたら

「ぅ……ん……?」

急に女が動いて、

『起きてんのか?』

問いかけたけど、反応はない。
でも、今度はギュッと服の裾を
握られて…。

『……おいッ』

プニッと頬っぺたを抓っても
少し服の握る力を強くしただけだった。

いつもなら、知らない奴に対して
無関心なのに……。
なんで俺は今、こいつに肩を
貸してやってんだ?

わっかんねぇよ……。
わかんねぇけど、ほっとけねぇんだ…。

『クソッ………。』

煙草の箱を握り潰し、女を
抱えて立ち上がった。

結構揺らしたのに起きることのない女。
どんだけ爆睡してんだよ…。

無防備に寝やがって………。
ギュッと力を込めると
折れそうな体。

そっと……
なんて柄じゃないが
そうでもしねぇと壊れちまいそうで
怖かった。



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