君のいる世界




本当は谷本麗奈と知り合って変われると思ったんだ。


正直、誰かを憎み続けることは辛い。


谷本麗奈といると、この五年間積もり続けた憎しみや怒りを忘れることが出来た。


今まで一瞬たりとも頭から離れることなんてなかったのに…そんなこと初めてだった。




今日あいつが悩んでるのを見て、あの海に沈む夕日を見せてやりたいって思った。


今まであの街に…親父の墓に谷本財閥の人間が足を踏み入れるなんて許せなかったのに。


この五年間頑なになっていた想いもすっかり忘れて、あいつをあそこへ連れて行った。


そんなくだらない想いよりも、俺はあいつの笑顔が見たかったから。




あいつが笑ってないと調子が狂う。


あいつが悩んでるなら力になってやりたいし、寂しいときは誰よりも俺が側にいたい。


いつからなのかわからないけど、谷本麗奈は俺の中で特別な存在になっていた。


もちろん、とっくに復讐の為にあいつを騙してやろうなんて浅はかな考えもなくなっていた。




それにあいつが親父の墓の前で手を合わせてるのを見た時、気持ちがすっと楽になった。


抜け出せると思った…変われると、あの時は思ったんだ…




あの男の姿を見るまでは。




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