君のいる世界




「あの…ごめんなさい。私……」



私はおじさんに深く頭を下げた。


私がした事はまるで駄々をこねる子供と同じ。


今になって後悔と浅はかな自分に怒りが込み上げてくる。




「おっ、お嬢様!頭を上げて下さい。お嬢様がご無事ならそれでいいのですから…」



おじさんは慌てふためくも、優しい言葉を掛けてくれる。


本当なら怒鳴られたっておかしくないのに。




おじさんは小さい頃からいつも優しくて、私の味方でいてくれた。


お母さんと離婚してから喜怒哀楽全ての感情が無くなった父親。


私と目も合わせようとしない父親をいつしか私も避けるようになった。


だからおじさんの優しさが嬉しくて…


おじさんが私の父親だったら良かったのにって、何度も何度も思った。




今だってそう。


父親なら私を叱ってよ…


叱って、そして無事で良かったっておじさんみたいに優しく声を掛けてよ…


そんなに興味なさそうに私を見下ろさないで…




…この人にとって私はただのお荷物。


そんなことわかってるのに…





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