君のいる世界




ふと視線を感じた気がして、料理から目を上げた。


父親は相変わらず新聞を広げている。


他にダイニングには誰もいないし、気のせいかな…




私は父親を見つめながら昨日のトミさんとの会話を思い出した。



ーーーーーーーーー・・・・



「そういえばこのマシュマロ、旦那様からのお土産なのよ」



「え?」



「さっきココア淹れてる時に麗奈さんにココアと一緒にあげてくれって。今日麗奈さんと連絡が取れなくなって一番心配していたのは旦那様だから」



私はトミさんの言葉に耳を疑った。




あの人が私を心配してた?


あんなに私に対して無関心なのに…?




「トミさん、そんなつまらない冗談やめて。あの人が私を心配するわけないじゃない」



私は薄笑いを浮かべてトミさんを見る。


だけどトミさんの表情からは冗談を言っているようには感じられなくて、思わず唇をギュッと閉じた。




< 212 / 497 >

この作品をシェア

pagetop