君のいる世界




「…じ、じゃあ、少しだけ」



すると琴音ちゃんはパアッと花が咲いたように笑顔になり私の手を掴んだ。



「良かった!麗奈さんに一度食べてみてほしかったんです!そうと決まれば行きましょう!」



琴音ちゃんは私の手を掴んだまま、グイッと引っ張るように走り出す。


嬉しそうに笑う彼女を見ていると、私まで嬉しくなった。




さっきいた大通りを曲がると、そこには活気溢れた商店街が姿を現す。


頭に白いタオルを巻いた魚屋のおじさんは「安いよ!」と手を叩いている。


八百屋には好青年が腰巻エプロンをして野菜を並べていて、女性客が多いように見受けられた。




「ここのお兄さん、モテモテなんです。おばさん達に大人気で、お兄さん目当てで毎日買い物に来ている客が多いんですよ」



琴音ちゃんは耳打ちするように教えてくれた。


私は女性のお客さんがやたらとお兄さんの腕を掴んでいる様子を見て、思わず苦笑いを浮かべた。





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