君のいる世界




「え…どうしてお見合いのこと?」



私と直幸さんのお見合いの話は、まだ公表されていないはずなのに。


それに婚約だなんて間違った情報まで広まっている。



「嫌ですわ。小出財閥の御曹司と谷本財閥の社長令嬢の縁談なんて、発表しなくてもすぐに業界に広まるに決まってますわ。日本トップの財閥同士ですもの。世紀のビックカップルって言われてますわよ!」



私は開いた口が塞がらず、周りから飛び交う言葉も耳に入って来ない。


呆気に取られてその場に立ち尽くしている間も、騒ぎを聞きつけた生徒が次々と集まって来て人集りはどんどん大きく膨れ上がる。


先生が教室に入るよう促しても、生徒は聞く耳を持たない。




「麗奈!!」



遠くから微かだけど佳菜子の声が聞こえた気がして、私はハッと我に返った。


ぐるりと見渡すと人集りを掻き分けるようにして佳菜子が私の所に向かって来ている。




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