君のいる世界
「はい…大丈夫です」
『典子から聞いたんだ…電話に出てくれないかと…思った』
直幸さんは悲しそうにポツリと言った。
その声に胸がギュッと締め付けられる。
『ごめんな。あいつ悪気はないんだ…少し気が強いだけで。典子の言ったことは気にしなくていいから』
「村内さん…本当に直幸さんのことが好きなんですね」
『…なあ、明日の夜ドライブでもしないか?少し、会って話がしたい』
すぐには答えられなかった。
こんな中途半端な気持ちで会ってもいいの?
村内さんを傷付けて…
このままだと直幸さんの事も…
ふと佳菜子との約束が頭を過る。
“絶対に自分の気持ちに嘘は付かないこと”
今は…会えない。
会長のことを忘れていない私は、彼に会ってはいけない。
「ごめんなさい」
『…っ、わかった。じゃあ、落ち着いたら連絡してほしい』
「わかりました」