君のいる世界




親父…


俺はどうしたらいい?


親父ならこういう時、どうする?




谷本麗奈のことを想うと、すぐにあの男の憎い顔が頭を過る。


一緒にいると、またあいつを傷付けてしまいそうで怖いんだ。




もうこれ以上、泣かせたくない。


怖がらせたくない。


嫌われたくない。




その時、季節外れの暖かい風が俺を包み込んだ。


優しくて心までホッとするような。


まるで親父が俺に答えてくれたかのような風。





ふと親父があの海で俺に言った言葉を思い出した。




“大切な女を守れるような心の強い男になれ”



“男なら好きな女を泣かせるな”




まだ小学生だった俺は深く考えずに聞いていたけど、今ならその意味がよくわかる。


親父が母さんを想うように、俺にも大切な人が出来たから。




俺はあいつを…


麗奈をこの手で幸せにしたい。


麗奈の太陽のような笑顔が見たいんだ。




ごめんな、親父。


今まで忘れててごめん。




もう迷わない。




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