君のいる世界
「あっ…ごめんなさい…」
咄嗟に壁側に寄り道を開けると、その人は私の横をすり抜け、生徒会室の一番奥にある生徒会長の席に腰を降ろした。
この人、毎回テストで一位の…
確か中澤大輝っていったっけ…
異常なぐらい美形で、どのアイドルやモデルよりもかっこいいって女子が騒いでたのを覚えてる。
この人が生徒会長…
「あ、あの。私、副生徒会長を務めます谷本麗奈と申します。これから一年間宜しくお願いします」
私は会長机の前に移動して自己紹介すると、中澤さんの目の前に手を差し出した。
やっぱり面倒臭いとはいえ、これから一年間一緒に生徒会委員としてやっていくんだし、それなりに仲良くしておいた方がいい。
だけど、
「…俺は宜しくするつもりはない」
中澤さんは私を一度も見ずに冷たい声でそう言い放った。
予想外の言葉に、ただただ唖然と立ち尽くす。
行き場のない差し出したままの手が、やけに虚しい。
数秒の沈黙が二人の間を漂う。
時計の針の音だけが妙に大きく聞こえた。