† of Ogre~鬼の心理
「真鬼に支配権は渡してない。たしかに真鬼は私の衝動の根源ではあるけど、真鬼はただの『衝動』だもの。私が負けるわけがない。衝動は心理で抑えられるものなのよ」

「うん。真鬼はたしかに君の中の衝動でしかないかもしれない。でもね、僕が訊いてるのはそういうことじゃないよ」

そういうことじゃない?

私は首を傾げた。

彼が、そっと両手を組む。

彼のメガネの奥の碧眼が、執拗に見つめてくる。

「僕が訊きたいのはね、真輝ちゃん。君の成長と共にまた、真鬼の力――つまり、鬼の能力も向上してるんじゃないかってこと。今の君じゃ抑えられないくらいに、とかね」

仁はタバコをくわえたまま、動かない。聞き耳を立てているようだ。

「真輝ちゃん、もう一度、今度は率直に訊くよ。君、鬼として次の段階へ移行し始めてるんじゃないのかな?」

「次の、段階……」

それは、自分で口に出して繰り返しても、あまり実感のないものだった。
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