† of Ogre~鬼の心理
頭は沸騰した湯を浴びせかけられたようにボウとし、体は見えないなにかに圧迫されているようだ。

布団がちょうど、吊り天井が落ちてくるトラップのように、重い。

そうした体の重さもだが、やはり一番の問題は、熱だ。

気管か脊椎、脳のど真ん中を焼き切らんばかりの熱となにかが、重圧の波に乗って私へ語りかけてくる。

―― だいじょうぶ? ――

と、文字がそのまま発音したような、無機質な声色で。

(――夢? それとも、熱のせい?)

曖昧で漠然とした予想の中に、

―― だいじょうぶ? ――

先ほどの妙な声が、また。

瞼は閉じているが、仁もアルもそばにいないことぐらいわかる。

二人の使い魔か眷属が近くにいる気配もなければ、なにかの力が作用しているわけでもない。不審者の気配もない。

が、

―― だいじょうぶ? ――

私に語りかけてくる声は、その不安定な響きとは裏腹に、たしかなものだ。

幻聴? 違う。気配も力もないなにかが、いる。

部屋にではない。

このうだるような、熱の中に。
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