† of Ogre~鬼の心理
真輝の治療はなかなかだ。アイツは世辞でもなく医者になれる。

本人は応急的なものだと言っていたが、アイツが縫った腕の傷はもちろん、接いでもらった骨も痛みはない。

達人は技を編み出すと同時にその外し方も思いつくらしい。

殺すことに長けるアイツは、生かすことにかけても一流というわけだ。

店主からオーダーを受け取ってから、二十分もかかるまい。

勢いよく仕上げた、客に出すのがもったいないくらいのスパゲッティカルボナーラを、接客に回っている店主へ渡す。

「いいにおいだ」

と、アルのような優男とは対角線上に位置する風貌の店長が、皿を受け取りつつほくそ笑んだ。

俺の腕を買い、やや高い時給で雇ってくれている彼は、なかなかに豪気な男だ。

そうだな……九十年代にロシア南部で見掛けた雪男の末裔に似ていなくもない。

特に、その太く毛深い腕とか。
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