† of Ogre~鬼の心理
藤岡悟がこの場にいない。

この場にいない。

いない。

喪失感と絶望感を、今、時を越えてまた、味わわせられる。

だからどうなってもいい。

だから、

「訊きたいのだけど」

私は、敵である彼女へさえも、質問した。

 、、
「お前、藤岡悟を、見なかった?」

訊問の声は、震えてしまっている。

それは、すぐ脇のガードレールに片手を突かなければならないほど衰弱した体力のせいか、彼がこの場にいないという精神ダメージか、自分でも判別不可だ。

不明瞭だ。不明快だ。不爽快だ。総じて、混沌なのだ。

そう、なぜ、藤岡悟はここにいない? なぜ? いない? 声はしたのに? 導かれたのに!

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