† of Ogre~鬼の心理
心が迷子のように啜り泣いている。

甘えたことばかりを、喚いている。

過ぎ去ったなにかを、嘆いている。

衝動が無音で、慟哭した。脈動した。咆哮を、叫喚を、あげた。

それは決して表に出ることがない、なきごえ。

私の声が、けだものを帯びる。

真鬼が、いや真輝が、否やはり、真鬼のほうが、呼応したのだ。

私の寂しさに。

藤岡の不在に。

裏切りに。

空虚に。

切に。

今。

   、、
「――貴様に用はない」

いない。

いない、いない。

藤岡悟がいない。

いない、いない。

藤岡悟はいない。

この場にいない。

いるのは?

いるのは……

いるのは――

いるのは、そう、得体の知れない、女だけ。

認めてなるものか。

今この場にいていいのは、私を導いた、彼だけなのだ。

もしもこの女が藤岡悟を騙り、私を誘き出したのなら。

なおのこと、なにがあろうと許すことはできなかった。

いいや、そんなことはない、とわかっているからこそ。

余計に、私の中のどす黒さは渦を巻き、隆起するのだ。

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