† of Ogre~鬼の心理
「――る?」

刹那に聞こえたのはなにか。

それは、鈴の、音。

清浄ゆえに穢れなく、穢れないゆえに身の毛もよだつような、気味の悪い白さ。

しゃらんしゃらん。

とそれは再び聞こえ、その瞬間、わたくしの目の前から女の体が弾け散った。

眼前で散るのは、花びらかと見紛う、『音』の残り香、その花弁。

桜吹雪もかくやという美しさはすぐさま霧散し、

「っ、な……!?」

感じるのは、わたくしの背後に集結する、存在感の塊、力の刃。

私は、その存在感と力を、知っている。

今の今まで、わたくしの腕に貫かれていたのと同じ、まったく同じ女。

ヤツが、背後にいる。

しゃらんしゃらん。

また聞こえた、気味の悪いほど綺麗な、鈴の音。

ひとつの答えに、思い至っていた。

女の正体を、今の現象で、推測できた。

 、、、
「まさか、」

「なにか、」

「貴様……っ!」

「不都合でも?」
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