† of Ｏgre～鬼の心理

第三十五節

†　第三十五節



熱い、熱い。うだるよう。熱い熱い、燃えるよう。

意識を混濁させる血の脈動に混じって、声が聞こえた。

アルと、仁の会話だ。

「ほら、藤岡少年の」「俺もそのフジオカ少年と――」「フジオカ少年の亡霊」「藤岡悟だよ？」「フジオカ、フジオカ」「その藤岡悟だよ!!」「フジオカ少年の話を」

ああ、聞こえてくる。いや、『それ』しか聞こえない。

フジオカ。藤岡。藤岡悟。藤岡の名前、そればかりが聞こえてくる。

口が、それこそ熱に浮かされたように、開いていた。言葉を紡いだ。ほとんど、喘ぎ声だ。

「藤岡が、どうしたの……？」

再三の質問が、たぎるような脳内には二重三重、まるで、鐘の響くように震幅を続けていく。

伽藍の空洞が、いつまでも口中で音をもてあそぶようにだ。