† of Ogre~鬼の心理
こんな、こんなこんな時まで貼りついたままの、空気も感情も読めない柔和な笑み。

不躾で、一方的で押しつけがましくて無理やりで、けれどその分、私のなにもかもを許容してくれる彼は、安らぎだ。

どれだけのわがままとどれだけの異常さを露呈しても動じない彼は、手応えのない暖簾であり、大きすぎる海であり、柔らかな揺りかごだった。

私が、大嫌いで大嫌いで大嫌いで、それでも好き、だった人。

藤岡悟。その思念体。

その彼が、私へ両腕を伸ばしてくる。

だから私も、熱烈に曝されながら、腕を伸ばした。

半透明の儚い姿、1にはなれず、0となること以外に使命のない彼が行うのは、行えるのは、たったひとつだけ。

―― 覚えてる、真輝? ――

すぐ耳元で聞こえた誓いは、

―― 僕は約束した。君が刃なら、僕は鞘になる。僕が、君が持っているすべての凶刃を覆い包むって ――

いつかと同じで、いつかと同じだからこそ、私の耳に届いた。

彼はいつでも不躾で、一方的で押しつけがましくて無理やりで、けれどその分、実直で、嘘は言わなかった。
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