† of Ogre~鬼の心理
「はん、お前と満足な会話をするつもりはねぇよ」

と切り捨てて、俺は南に据えていた御符を拾い上げた。それを、トランプのように投げる。

薄っぺらで細長い御符が、回転盤のように空気を裂いて飛ぶことはない。が、俺の御符は回転ではなく、笹の葉が風で送られるように一ツ橋の手元へ渡った。

必要最低限の動作でそれを受け取ったヤツは、

「――ふむ。たしかに」

と、たった一度だけ頷いて、それをポケットの中へしまった。また、後ろ手が組まれる。

「お前の要請通り、南区での出来事をすべて、それに記録してある。これでいいんだろう?」

「ええ。問題ありませんよ」

「……ふん。そんなもの、なにに使うつもりだ。まさか、しようもないことを考えちゃいないだろうな?」

「いえいえ、ただ、鈴原家から頼まれましてね。今回の件について、なにかしらの情報がほしい、と。あの巫女は鈴原一族にとっては、たとえあのような姿であろうと身内、といって違いないでしょうからねえ」

「……鈴原、か。……なるほど」

実際に耳で聞いたことはないし、知り合いでもないが、知っている名ではあった。

恐らく、真輝も名前ぐらいなら知っているだろう。
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