† of Ｏgre～鬼の心理

そう叩くように言ってやったら初めて、彼の笑顔が崩れた。

「わかるよ」

泣いているような、怒っているような、ひどく灰色じみた表情。

「僕にはわかるよ……真輝、君が――」

信号が、青になった。

私は横断歩道へ一歩踏み出し、彼の言葉を踏み潰した。

いいえ。お前にはわからないわ。

絶対に。絶対に。

と、否定で練り固めた、ことばで。

そこで――

「君が、だれも寄せ付けない孤高の刃だってことを、僕は知ってる」

彼はとても、とても真剣な目をしていた。

思わず立ち止まり、振り返ってしまった私の手を、彼が握る。

冷たいのかあたたかいのか微妙な体温だったが、それは、紛れもない人の手だ。

信号が、また赤になった、その下で、

「だから約束するよ。君は刃だ。なら、僕は鞘になる。これから先ずっと、君を守る鞘になる。僕が、君が持っているすべての凶刃を覆い包む。それが僕の存在意義だ」

その言葉に込められた強さ、向けられる眼差しの優しさと熱を味わうのは――