† of Ogre~鬼の心理
そんなことを思いながら、ポケットから油性ペンを取り出した。

キャップを外し、通り抜けざまに、電信柱にマーキングする。

この数時間、のんびりと買い物をしながら、これを繰り返した。

こうしておけば俺の気配はここにいくらか残留するし、撹乱にもなる。

点々とマーキングを行ったから、俺の気配は今や、通りのそこかしこにあった。

無論、本体である俺の気配が、残留しているものと比べ物にならないのは事実だが……自分の気配を抑制できないヤツは三流以下だ。

もちろん俺は三流ではないからして、マーキングしたレベルまで自分の気配を落とすことも簡単だ。

まあ、こんな作業をしながら歩かなければならないのが、ひどくめんどくさい話なのだが、おかげで向こうとの距離も上手く開けられている。

と、買い物カゴの中身を確認し、数日分の食料に足して。シチューの材料が揃っているか頭の中に並べた時、

「おぉっといかん」

肝心なものがないことに気付いた。

シチューのルーを忘れているではないか。
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