ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

呆然としたまま、心の声をぼそっと表に出してしまう。

「じゃあ俺の計画はうまくいってるってことだ……」

「えっ? 何?」

しまったっ!  
こんなところで“罠”のことがバレたら、元も子もない。
「何でもない」と梓に言ったら不審そうな顔をされたが、それは横に置いといて。
嫌われていないとは思っていたが、胸が痛くなるほど俺のことが好きだったなんて……。
ダメだ、人間嬉しすぎると笑いが込み上げてくるみたいだ。

「そっかぁ、梓は俺のことが好きなんだ」

梓の顔が、一瞬で赤くなる。
四年ぶりの恋愛は、梓をウブな乙女に逆戻りさせたしまったみたいだ。
佐々木さんのことは気にするな、俺が好きなのも梓だけと伝えると、前髪をかき分けおでこにそっとキスをした。

好きだと言ってみたものの、おためしの恋愛だと思ってる梓に、どこまで俺の本気が伝わったのか……。
まぁ梓の気持ちが分かっただけで良しとしよう。俺の気持ちは、これから甘い言葉と共に教えていけばいいんだから……。

でもちょっとだけ、からかいたくなってしまった。
梓を腕の中に抱きしめると、耳元に唇を寄せる。

「あぁ、梓が言った『美人が好き』って言うのは間違いじゃないな」

梓が腕の中から顔を上げ、ムスッとした顔で俺を睨んだ。

「じゃあやっぱり彼女のことも好きなん……」

彼女の言葉を、途中で遮る。

「ばーかっ。梓のほうが美人じゃん」

照れてるのか更に赤くした顔を伏せると、離してと言わんばかりに身体を捩った。

「とにかく契約期間のクリスマスまでは“おためしの恋愛”を続ける。いい?」

俺のその言葉に素直に頷く梓を、もう一度強く抱きしめた。
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