ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

梓も落ち着いてきたみたいだ。それでも幾分元気がない梓に、何かできることはないだろうか?
ふといたずら心に火がつく。
レジを済ませ店を出ようとする梓の手を引き、人目につかない場所に連れ込むと、訳が分からない顔をしている梓の唇にキスをした。

「元気出た?」

驚き大きな声をだす梓の口を押さえると、グッと顔を寄せて囁く。

「……いい、よく聞いて? 今もこれからも、梓は俺の大切な彼女だから。分かった?」

何て勝手な言い草だ。でも心からの、本当の気持ちだからしょうがない。
この言葉を彼女がどこまで本気にしたかは分からないけれど、『分かった』と言うように頷く姿は、頬をポっと赤く染め照れているようだった。
そして何も言わず手を握ると、鼓動が速いのに気づき、嬉しくなってしまう。


ランチの予約時間までまだ時間があった。もう少しぶらぶらしていると、梓があるショップの前で足を止めた。
ショーウインドーに飾られている、ウエディングドレスに目を奪われているようだ。
結婚しないなんて言っておきながら、やっぱり梓も女の子なんだ。
ついつい、「もう結婚したくなっちゃったとか?」とか「結婚しないんじゃなかったの?」と、梓が困るような質問ばかりが口をついて出てしまう。

ドレスには興味がある。デザインが好き。結婚なんて関係ないと、言い訳がましいことを言う梓。
そんなに意地を張ることないのになぁ……。

もう一度、飾られているウエディングドレスを見る。
胸の開き具合が少し気になるが、色が白い梓に似合いそうだ。

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