ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

遼さんとの出来事どれを思い出しても、遼さんからの想いが溢れていた。
今頃そんなことに気づくなんて……。
お試しで始まっていた恋は、いつの間にかその域から大きく超えてしまっていたんだ。

「遼さん……」

両目からは、ぼろぼろと涙が溢れている。
枝里が「はい」と言って、ティッシュを手渡してくれた。
きっと涙を拭けってことだろうけど、涙と同じだけ垂れている鼻をズズーッとかんだ。

「面白い顔っ」

枝里が手を叩いて笑い出した。つられて、泣きながら笑ってしまう。

「ほ、放っといてよっ!」

「私が言いたかったこと、分かったみたいだね」

そう言うと、枝里が肩の荷が下りたようにホッとした顔を見せた。


───今でも遼さんのことが好き?───


枝里のその一言が、私のダメな心を揺り動かしたみたいだ。
お兄さんにあんなことを言われても、500万渡されても、遼さんを好きな気持ちは変わらない。それどころか、今まで以上に好きになっているような気がする。
それにそんなことで諦められるような、中途半端な気持ちじゃない。
大好きで大好きで、遼さんのことを思うと胸がキュンとなるくらい好きでしょうがないのに、私はひとりで何をグダグダしているんだろう。

何か、視界がパッと晴れたような気がした。

部屋で一人篭って、ボーっとしている場合じゃない。
いつも枝里に言われるように、自分から動かないと何も変わらないんだから。


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