ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
ラスト・トラップ

  フラワーシャワーに包まれて…


時が経つのは早いもので、遼さんと結ばれたあの日から、あっという間に三ヶ月が過ぎていた。

今日は5月に決まった結婚式の衣装選びに、遼さんのお母さんと百合さん連れられてブライダルショップに来ていた。少し遅れて、遼さんも来る予定だ。

あっという間とは言ったものの、今日までの間に何もなかったわけじゃない。

さすがに年末の遼さんは忙しく、ゆっくり過ごせる日は殆ど無かったけれど、唯一クリスマスイブの晩だけは、少ないながらも甘い時間を過ごすことが出来た。
遼さんが店の片付けが終わり、三階に上がってきたのは夜中の二時を過ぎた頃。

「待たせちゃったね。はいっ、クリスマスプレゼント」

眠い目を擦りながら待っていた私の前に、赤と白、二層の色合いが美しいカクテルを置いた。

「これは“アメリカン・レモネード”って言ってね、冷やしたレモネードの上に赤ワインをフロートさせた、爽やかで口当たりの良い女性向きのカクテルなんだ。ほら見て。赤ワインが徐々に浸透していく様子は幻想的で、クリスマスにピッタリだろ?」

今日もオープン時からひっきりなしにお客さんが入り忙しかったにもかかわらず、疲れた顔ひとつしないでそう説明してくれると、嬉しそうに私の横に座りカクテルの入ったタンブラーをひとつ手に取った。
私も同様に手にすると、どちらからともなくタンブラーを合わせた。

「メリークリスマス、梓」

「メリークリスマス」

遼さんの言った通り、赤ワインがほんのり香り、爽やかな味が喉をスーっと通っていく。

「ふふ。美味しい」

遼さんらしいプレゼントに、クスっと笑みが漏れる。
本当は、ちょっとだけ期待していた。何をプレゼントしてくれるのかと……。
でもよく考えてみればずっと忙しく働いていて、そんな暇はなかったはず。
こうやって二人でお祝いできるだけでも、最高のプレゼントだ。

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