ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
年明けは遼さんのお店も一週間の休みがあり、元旦にはこの地方で有名な商売繁盛などにご利益のあるお稲荷さんに行った。

さすがに正月というだけあって大勢の人で混み合っていて、少しでも気を緩めたらその人波に飲まれ、何処かへ連れて行かれそうだった。

でも私は大丈夫。

隣で寄り添っている遼さんの右手は腰を強く抱き、左手は大勢の人たちから守るように私の身体を包み込んでいる。
これはこれで、人混みとは違う意味で歩きにくいんだけど……。
でも正義の味方か、はたまたSPのように私を守ってくれる姿は、喩えようもなくカッコいいわけで。

そんなこんなで30分かけて神様の前まで行くと、二人横に並び油揚げをお供えしてお参りをした。

昼食には門前町で、名物の串カツと土手煮を食べ、おみやげ用にたい焼きを買い込んでその場を後にした。


その三日後には、私の両親への挨拶に出向いた。
簡単な話しか聞いていなかった両親は、最初こそ遼さんが小野瀬建設の息子と聞いて驚きを隠せず、「そんなところへ嫁ぐのが、こんな子でいいのかしら?」と失礼千万なことを言いながらも、私の心配をして言葉を濁していた。
けれど遼さんが、「小野瀬とは関係なく、お店を経営しながら、梓さんと新しい家族を作って行きたいんです」と思いを伝えると、両親も安心したのか、二つ返事で結婚を了承してくれた。

特に母親は、イケメンで優しい遼さんをとても気に入ったらしく、その後ちょくちょく店に顔を出すようになった。
二人の仲の良さに、私の方が一人ぼっちにされてしまい、焼きもちを妬くこともしばしば。
でも仕事が終わり私の身体を抱くと、「大好きな梓を産んでくれた人だよ? だから大切にするのは当然だろ?」なんて、さも当たり前のように耳元で囁くもんだから、すぐに許してしまう。母親と遼さんに、焼きもちを妬くなんてね。





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