ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

何? その意味深な態度。本当の彼女じゃないのに、分かれっていう方がおかしいでしょ。
それに、勘違いしちゃうじゃない……。
困った顔をして俯くと、力を込めていた手の力を緩め、小指で甲を優しく擦りだした。

「ごめん。そんな顔させるために言ったんじゃないんだ。でも、紹介くらいはいいでしょ?」

遼さんの本心はやっぱり分からないけれど、その笑顔は卑怯だ。
つい何でも許してしまいたくなる。
紹介かぁ。それが本当の彼女だったら……。
なんて、考えても無駄なことはやめておこう。
諦めたように何回か頷くと、彼はホッとしたのか肩で大きく息を吸い、ふぅーっと吐き出した。

それからしばらく、二人とも口数も少なく時間だけが流れた。意識しないでも、繋がれた手に気持ちが集中してしまう。

おためしの契約をしてから今日で五日目。
やっぱり一緒にいる時間が多いと知らない面が見えてきて、遼さんをもっと知りたいと思うようになってきていた。
今日だってそう。まだ会ってから一時間ちょっとしか経ってないのに、いろんな遼さんが顔を出している。気になって仕方がない。
会うたびに違う顔を見せる遼さんに、翻弄されてる?
4年間も男性を拒否し続けてきた私からは、想像できなき気持ちだった。







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