ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

レジに向かいバッグから財布を取り出すと、その手をサッと遮られてしまう。
顔を上げ首を振ると、目の前に店員さんがいるというのに頭を撫でられたしまった。

「食事は男が奢るもの」

そうだとしても、ここで頭を撫でるのはちょっと……。
その場にいるのがいたたまれなくなってチョコンと頭を下げ、先に店を出た。

今日の遼さんは、やっぱり可怪しい。
人前だというのに、やたらスキンシップが多いというか恥ずかしくなるようなことばかりしてくるなんて……。
どんな羞恥プレイなのよっ!!
顔に手を当てて、他人から赤い顔が見えないように車の前で立っていると、背中側からその手を取られてしまう。
驚いて振り向こうとしたら、耳にふっと息がかかった。

「先に出てっちゃうなんて、ヒドいなぁ~」

「ヒドいのはどっちっ!!」

怒ってみせても顔を私の肩に乗せたまま、楽しそうに笑ってる。

「からかってるんでしょ?」

「からかう? 違うよ。ドキドキさせてるの。今日は梓も楽しませてあげるって言ったはずだけど?」

確かにそう言ってたけど、ドキドキし過ぎて楽しむ余裕がなくなってきちゃってるじゃないっ。
久しぶりのドキドキに、どうしていいのか分からない。
こういう時って、甘えてみてもいいのかなぁ?
ふとそんなことが頭を過ると、肩に乗っている顔に自分の頬を寄せてみた。

「うん、いい傾向だね。そういう甘え方、素直で俺は好きだな」

“好きだな”の一言に、遼さんの本当の気持ちが知りたくなる。
恋愛の楽しさと甘さを思い出す=私が遼さんのことを好きになる。
そんな計算が成り立ってしまうしまうなんて……。

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