ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

「枝里っ? 今日はどうするのよっ!!」

『ちょっとっ、なんで私が怒られないといけないのっ!!』

遼さんとの電話を切ったテンションのまま、枝里からの電話に出てしまったことに気づく。

「ごめん、ちょっとあってさ……」

『何? 遼さん関係?』

「うぅ……」

『まぁいいわ。話しはあとで聞く。ところで梓、昔よく行ってた洋食屋、覚えてる?』

「あぁ、ハンバーグが美味しいとこね」

『そうそう。そこに予約入れといたから』

行動が早い枝里には、頭が下がる。

「じゃあ今から向かうね」

『はいは~い』

携帯をバッグの中にしまうと、いつもとは違う駅に向かって歩き出す。
最近は当たり前になっていた道のりと逆の方へと歩く。目に入る店や看板が違うだけで、こんなにも違和感を感じてしまうなんて……。
遼さんの店に行くのが、私の日常になってしまっているんだ。
この日常が、ずっと続けばいいのに……。

冷たい風が頬に当たると、身体がブルっと震える。
少しづつ増えてきたクリスマスイルミネーションを横目に見ながら手をポケットに突っ込むと、小走りに駅へと急いだ。

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