精神科に入院してきました。

夜8時からテレビをみよう、と思った。
ホールに新聞を見つけて、隅々まで熟読して、テレビ欄をみつけて、テレビでもみようと思った。


 時計をみたら、なんと6時45分。
まだまだ夜は長い。

ホールにいても、誰もいないので、逆に気兼ねすることなく、私はテレビをつけた。
7時のニュース。8時のバラエティ。


暇つぶしに黙々と、何かを消化するかのように私は一人でテレビを見た。


 患者なんてほとんど全員部屋から出てこられないか、ホールに連れ出されて食事の介護をされているお年寄りばかりだと思っていた。


だから、突然中学生くらいの男の子が現れたときにはびっくりした。
 ひょろ長い身長、いや小学生と言っても通じる雰囲気の少年。


彼は私を見て、びっくりしたのか真顔で固まって、それから私の隣の隣の部屋に戻っていった。
 そのあともまた、男性が一人現れた。
中年の、おとなしそうな彼は私の近くの椅子に座ってテレビを見始めた。


 私は、リモコンを渡すべきか悩んだけれど、まずこの病棟で言語が通じるレベルの患者に会ったことがなかったので、話しかける勇気が出なくて、自分が椅子から立ち上がり部屋に戻ることにした。


 ああ、早く帰りたい。


寝る前に睡眠薬を渡されたけれども、さっぱり眠れなかった。


夜中、こっそり部屋の扉をあけてホールの時計をみると、ちょうと12時だった。

消灯後二時間たっている。
睡眠薬服用からは三時間。

なのに眠れない。


私はたまらず、ベッドの上に座った。
寝転んでいることすら苦痛だった。



昼間聞いた看護師のどなり声が頭から離れない。
不安、恐怖、いらだち。
そして、合法的に閉じ込められている(犯罪など犯してもいないのに!)状況が怖かった。


しばらくそうしていると、扉についている小窓から懐中電灯の光が差し込んだ。
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