雨、ときどきセンセイ。

「……そう。それで、水越は“センセイに迫る私”を抑えにきたんだ」
「いや！　そんな……そんな風に思ってはいないけど、けど……」


さすがの私もちょっと感情的になって言ってしまった。
それは水越に対してじゃなく、香川先生に対しての感情だ。


……ズルイ人。

だって、面倒なことを水越に動いて貰って、自分はただセンセイにだけ好意を伝える。


私だって、水越だって……センセイだって。


不器用ながら、自分の力で誰かと必死で向き合ってるのに。

それをただ、自分に利があるように引っかきまわすっていうのはどうなんだろう。


何とも言えない思いのまま、私は口を噤んでいた。


「オレは、香川センセの言うことがもしも本当のことなら……そうだとしたら、わかってて吉井の傷つくとこ、見たくない。それだけだったから」


話しの後半、私から顔を逸らして俯きながら、徐々に小声になる水越を見て力が抜けた。


水越はそういうヤツ。

自分の利よりも、相手を優先させるような、優しいヤツ。


そして、きっと、センセイも同じような気がするから。


「……悪いけど、誰かに先回りして守られるのって、性じゃないから」


ごめんね、水越。


「傷ついたとしても、それが自分で選んだことならそれでいいの。そうした方が、きっと前に進めるから」


私、ここでやめられない。