† of Pupil~瞳の魔力
「姉さん――その鈴を鳴らすの、やめてよ」

「……」

ちりん。ちりん。けれど、彼女はやめない。ちりん。

「わかってないの、賢一は」

ちりん。負荷が。ちりん。強まる。床に突く腕がガタガタ震える。ちりん。

「わかってない。人あらざるということの大変さを。それを教えずにすむのなら、そのままでいようと思う人の気持ちを。わかってない。意味を知らない、六条の。それは危険なの、一歩間違えば」

ちりん。背中が。ちりん。曲がる。

「危ういの、六つの条を手繰る血は。賢一、お願い。留まって、今ここに」

ちりん。息が。ちりん。苦しい。

それでも、

「できないよ、姉さん」

僕は顔をあげた。ひたいに意識を集中させて、第三の目を開いた。

姉さんの表情が曇る。

やってしまった、という、静かな叱責の眼差しだ。

ちりり。と、姉さんの意識とは関係なく震えた腕の先で、鈴が泣いた。

苦笑する。

「これは、そんなにもいけないことなのかな?」

「……」

「どうなのさ?」

< 180 / 252 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop