† of Pupil~瞳の魔力
僕は、
「……別に……なにも……ないよ……別に……」
言おうか、言うまいか、言おうか、言うまいか、何度も自問自答して、結局言わなかった。
明らかに、なにかあったんだと睨んでいる姉さんの目は、一直線だ。
はたから見たら、儚そうな雰囲気の姉さんは、だけど時々、信じられない威圧感を放つから、驚く。
ちょうど今のように、まるで眼力で僕を麻痺させようとしている目がそれだ。
「ないの、なにも?」
「うん。ないよ。なにも」
「……そう」
と姉さんは頷いて、トーストをかじった。僕への眼力も、それでやむ。
自然に、力の入っていた肩の線も緩む。
(よかった)
実は実は、このお世話上手で頼れる姉さんが、僕は少し苦手なのだった。
結局、当然とも言うべきか、姉さんに昨日見た光景のことを、話すことはなかった。
自分の中では、身勝手なほど固く、風間一二三さんを殺したという意識があるのに――
それを、他人にまで言う気にはなれなかった。
いや、というよりもむしろ、他人には知られたくなかった。
「……別に……なにも……ないよ……別に……」
言おうか、言うまいか、言おうか、言うまいか、何度も自問自答して、結局言わなかった。
明らかに、なにかあったんだと睨んでいる姉さんの目は、一直線だ。
はたから見たら、儚そうな雰囲気の姉さんは、だけど時々、信じられない威圧感を放つから、驚く。
ちょうど今のように、まるで眼力で僕を麻痺させようとしている目がそれだ。
「ないの、なにも?」
「うん。ないよ。なにも」
「……そう」
と姉さんは頷いて、トーストをかじった。僕への眼力も、それでやむ。
自然に、力の入っていた肩の線も緩む。
(よかった)
実は実は、このお世話上手で頼れる姉さんが、僕は少し苦手なのだった。
結局、当然とも言うべきか、姉さんに昨日見た光景のことを、話すことはなかった。
自分の中では、身勝手なほど固く、風間一二三さんを殺したという意識があるのに――
それを、他人にまで言う気にはなれなかった。
いや、というよりもむしろ、他人には知られたくなかった。