とびらをあけて~大人になる日~
ダイジェスト
「さあ、行こうか。」


「行くって、どこへ?」


「昨日から、君がこの世に生まれた日まで。

 過去を遡って、またここに戻って来よう?」


「ダイジェスト、ってやつね。」


*~*~*~*~*~*

さしのべられたてをとると、

しょうじょはかこをさかのぼりました。

19さい、18さい、17さい、16さい。

ちゅうがっこうじだい、しょうがっこうじだい、ようちえんじだい。

そして、ものごころがつくすこしまえ。

*~*~*~*~*~*


「あっ、引っ越しだ」


「二歳の頃だね。」


*~*~*~*~*~*

トラックがきて、にもつはこびのおにいさんがきて、

おもちゃをぜんぶわたしなさいといわれたけれど、

おんなのこはぼろぼろになったぬいぐるみだけははなしませんでした。

いやいやをしながら、ぎゅうっと、だきしめていました。

*~*~*~*~*~*


「ずっと持ってた…」


「なにか言った?」


「門番さん、私、あの子になっちゃダメ?」


「ダメじゃない、けど…?」



「上からじゃなくて、体験したままをもう一度、味わいたいの。」


「……わかった。それじゃあ、君をあの子の中へ送るよ。」
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