あなたは私の王子様。―Princess Juliet―

瑠璃鳥が朝を告げ、
薄いクリーム色のカーテンの隙間から
淡い光が溢れる。

(――――あったかい…)

薔薇の薫りに包まれた柔らかなベッドの
まるで抱き締められているかのような
心地よさにうっとりとしながら
ジルはもう少し余韻に浸ろう、と
掛布をひきあげた。

(こんなに眠ったのは久しぶりだわ)

レティの結婚が決まってからは
常に増して忙しなくなり、
僧院の僧達が起きる時間に就寝し、
朝日がのぼりきる前に起きるという生活が
続いていたジルにとって、
まさに今の環境は
贅沢としか言いようがなかった。

せめて女官達が起こしに来るまで
眠っていよう、と寝返りを打ち
さらりと金茶の髪が頬にかかって
はじめてそのぬくもりの存在に気付く。

「……え、…殿下…?!」

柔らかな光を宿す琥珀色の目が
ぱちり、と合うとハインツは
悪戯がみつかった子供のように微笑んだ。

「おはよう、ジル。」

「おは…え…な、何故殿下がここに…」

「何故って」

ハインツはきょとんとした。

「ここは君と私の寝室じゃないか。」
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