『武士ドルが斬る!?』〈前編〉


 「吉乃…。
 許さぬ…。
 断りもなく勝手に長旅など許さぬ…!」


 吉乃の亡骸に怒号を浴びせて唇を噛み締めた。


 「あい…。
 わかった…。
 皆の者下がれ…。」


 自分の言葉にその場にいた者が一礼して自分と吉乃を残し部屋を去った…。


 小牧城が完成したら吉乃…お前とそこで暮らせる…と報告した時…お前は寂しい表情をしてわしの意見に逆らいその度によく言っていたのを思いだす。 


 「…この場所が殿と私の城でもあり…砦でございます。
 この場所なら…いかなる遠くに殿が合戦に行かれようともよく見えます…。」

 常に明るい笑顔でお前は…よく言っていた。


 この場所を訪れた時も…お前は、この場所は2人の砦だ…とよく言ってくれたな。

 だから…ここではお心に従い振る舞いなされ…。と言って笑ったこともある…。


 合戦にでる前は…殿はいかなる遠き戦場において行かれましても…私はこの砦において共に戦い…殿の添え星となってご武運をお祈りいたしております。


 様々な吉乃との思い出に涙が溢れてきた…。

 吉乃が眠りについた日…お前の亡骸を抱きしめて涙が枯れるまで泣いた。


 胸に手をあてて…添え星として…共にいるから寂しくないと笑うお前の笑顔を胸にしまいわしは…数々の戦において「鬼」と 化す…。


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