『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
隣人は…天下人!?


 「…吉乃…。」


 また…いつもの夢だ…。

 私は夢の中では…吉乃と呼ばれている…。


 名前を呼ぶ人に夢の中の私は嬉しそうに笑い出迎える。


 「殿…。」


 殿…と呼ぶその人は…木立にとまる鶯をみていた。


 「鳥というのは…不思議だ…。
 どんなに渡り歩いて別の地に移ったとしても…元いた場所へと帰ってくる…。」


 鶯を眺めながら…殿は私に微笑む。



 「きっと…自分の帰る場所を決めているのでしょう…。」


 私は…夢の中の殿という人物に語りかけて木立を飛び回る鶯達を見つめた。


 「よいな…。
 鳥の連中は…! 」


 殿は縁側に腰掛けて鶯たちを眺めて羨んだ。


 「殿もこの場所を帰る場所としてお使い下さいませ…。
 あの鶯たちのように…。」


 私は…仲むつまじくよりそう二羽の鶯に眺めて答えた。


 「…吉乃。
 どこにも行くなよ。」


 殿はいつも乱暴に手を手繰り寄せ夢の中の私を抱き寄せる。


 私はその懐に抱かれ…殿という人物を抱きしめた。



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