『武士ドルが斬る!?』〈前編〉


 走り去るのを確認した殿は…その景色を間近に自分の目で見てみたくなり閉ざされた扉を開き消防車たるものから降り立ち…借りていた銀の上下の服をはぎ取ると帽子と同じ色の服となった。


 はいだ衣をたたむとその上に親切にしてもらった礼として金判を衣の上に置き、扉をしめ消防車たる間をすり抜けて白煙の途切れる先を目指し歩き始めた。


 白煙の騒ぎを聞きつけ駆けつけてきた民の者達なのか…やたら変わったいでたちをしていた。


 その中を逆らうように前に進みやがて…人混みの前にでた自分は…最速で走る4輪の荷車が煙をあげて行き交うのを目の当たりにする。


 赤と黄と青といった3色の明かりを放ち…道には白きハシゴで描かれた所を平然と歩く人々…。


 そして…何よりも天高く連ねる要塞群…。


 安土城もかなり立派な作りに仕上げたつもりだったが…ガラス細工を施して頑丈に作られた高い要塞とも塔ともいえる景色に見るものただただ驚くばかりだった。


 「す…すまぬ…。
 今…ここは…なんという場所だろうか?」


 近くを通りかかった老女を引き止めた殿は尋ねた。


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