BRACK☆JACK～本章～
　だが構わずに、ロンはゆっくりと続けた。


「そして、もっと残念なことに…現代の科学力では、人間の記憶と言うものの構造は、まだ解明されてはいない。だから個人の記憶というものはその本人にしかわからないんだよ。よって必然的に、我々は君“たち”を簡単に殺すことはできない」

「………そりゃどうも」


　不敵に笑いながら、レンはいささかこの場にそぐわない礼の言葉を述べる。

　それなら、こっちに向けられているこの黒い筒をどっかへやってくれ、と心の中で思いながら。

　そんなことには全く関心がない様子でロンは穏やかに笑っている。


「我々の望みは“情報”だ。それも、喉から手が出るくらいにね…金なら、いくらでも出すんだが」

「…互いの利害が一致しねェようだな」

「世の中には、強者と弱者しか存在しない。今このシチュエーションの場合、どちらが強者かな？」


　ロンのその言葉に、周りの男たちは銃のセフティーロックを解除した。
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