鬼事 -オニゴッコ-
そこにいたすべての人が
声のするほうに一斉に目を向けた。
浜辺で一番高い木の上には直衣姿たの男が腰掛けていた。
結わないままの黒髪が風に揺れ、
覗く古代紫色の瞳が浜辺に集まる人々を静かに見下ろしていた。
「紫暮(シグレ)様ー………」
「紫暮様がいらっしゃった」
「あの紫暮様だ」
紫暮と呼ばれる男は不適に微笑みまた口を開いた
「骸を拾わぬと云うのにこそこそと…
そなたら ちと趣味が悪いぞ」
トン、と軽い音をたてて
紫暮が木の上から降り立った。
即座に周りの人間が道を開ける。
「まあ、儂も噂を聞いた一人だ
しかし、まあ、何にせよ実際の女を見たらな……」
紫暮は波打ち際に上げられたらままの女の前に立った。
「骸にせよ、欲しくなった」