ふたり輝くとき
2人がやってきたのは、城下町のにぎやかな通り。

ユベールは呪文を使って自分とサラの外見を変えた。さすがに王子とその婚約者が護衛もつけずに城下町をふらふらしてはいけないということは心得ているらしい。

レフレクシオン――古代ルミエールの呪文だ。光の波長吸収率と反射率を狂わせて物体の色や形を変えることのできる呪文。つまり物体の見た目を変えることができる。

今、2人は周囲に別人として見えているだろう。手をつないで、仲睦まじい恋人だと……思われているのだろうか。

サラはそんなことを考えてキョロキョロと辺りを見回した。

行き交う人々は、それぞれに買い物を楽しんでいる。親子連れであったり、恋人同士であったり、1人で黙々と歩く人もちらほらといる。

「そんなに珍しい?」
「え、あっ、ごめんなさい」

つい、夢中になって町の様子を観察してしまっていたサラにユベールが声を掛けてくる。クスクスと笑っているところをみると、しばらくサラの様子を見ていたようだ。

サラは頬が熱くなるのを感じた。

祖父母の家は田舎にあったから、こんなに人がたくさんいる通りは初めて来たのだ。ユベールにとっては何でもないことだろうに、恥ずかしい。

「どうして謝るの?興味津々で、でもちょっと不安って感じで可愛かったのに」
「あ、あの……」

“可愛い”なんて、男の人に言われたことがなくてサラの心臓は壊れてしまうかと思うくらいに騒ぎ出す。
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