ふたり輝くとき
――湯浴みの後、サラが部屋へと戻ろうと廊下を歩いているとユベールが壁にもたれて天井を見上げていた。

ドキッとした。先日、「帰りたい」と喚いてしまってから少し気まずくて……ユベールも同じなのか、部屋を訪れてもあまりサラに話しかけてはこない。

声を掛けようか迷ったけれど、サラは思いきって息を吸い込んだ。

「ユベール様?」

ユベールの肩がビクッと跳ねる。驚かせてしまったようだ。彼がこんな風に放心しているのは初めて見る。

「お加減でも悪いのですか?」

近寄ると、ユベールは少し顔色が悪いように見えてサラは心配になった。

「サラ……」
「ユベ――っ」

それは、突然で。

身体を強く引かれたと思えば壁に押し付けられ、重ねられた唇は少し震えているような気がした。サラの口内を探る舌にも……迷いのようなものがある。

「っ、ん……はぁっ」

唇が離されると、ユベールがじっとサラを見つめてきた。

「ねぇ……僕のこと、好きになったよね?」
「ユベール様、それは――」

サラの否定の言葉を飲み込むようにもう1度キスをされて、サラが苦しくてクラクラする頃、ユベールはサラの手を引いて歩き出した。

サラはぼんやりする頭で前を歩くユベールについていくことしかできなかった。


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